ロハスクラブ
価値は「流れ」にあり。グリーンな暮らしの裏に、“動的平衡”。
記念すべき第50回目のロハスクラブ評議会ミーティングでは、分子生物学者で同クラブ理事の福岡伸一先生が登場。環境の世紀を迎えた今、 “動的平衡”の視点を軸に現代社会が抱える問題を読み解きました。
上/研究室での福岡先生。膵臓の消化酵素分泌メカニズムを解明し、そのメカニズムに重要な役割を果たしているとされるタンパク質(GP2)の 特定に成功した。下右/マウスを使って動的平衡を説明。下左/生命は流れである、と説いたルドルフ・シェーンハイマー(1898-1941年)。


 「低炭素社会」に「生物多様性」と、地球環境を守る暮らしがますます重要になってきている 今、企業は環境を軸にした活動を行い、個人もまた環境を踏まえた消費行動をとり始めている。しかしながら、環境に関する情報が氾 濫し、どのようなアクションを起こせばよいか、実際迷うことも多い。本誌の連載でもおなじみの福岡伸一先生は、著書のタイトルに もなっている「動的平衡」の視点が、環境に関するさまざまな問題を解決するカギとなると発表した。

 動的平衡の考え方は今から約70年前、科学者のルドルフ・シェーンハイマーが「生命は機械ではない。生命は流れだ」という新たな 生命観を発見したことに始まる。生命現象が絶え間ない分子の交換上に成り立っていること、つまり分子の平衡状態の上に生命が存在 しうることを明らかにしたのだった。これは、生命を機械的なパーツの集合体ととられるのではなく、可変的でありながらサスティナブ ル(永続的)なシステムであるという古くて新しい視点に立っている。

 福岡先生はこの視点が生命現象にとどまらず、地球環境、私たちの社会、組織などあらゆることにも当てはまると主張。つまり、こ の〝動的平衡〞のコンセプトを元に物事を考えれば、おのずと答えが見えてくるというのだ。「この地球上で一番大事なことは、お金、 今月のDATA花粉症の人が多い県低CO²、水、エネルギー、情報などいろいろなものがグルグルと回 っていて、その回っているバランスが大切なのであって、回っているそのものには価値がないのです。そこに価値を見出し過ぎたため、 溜めてしまったり、滞ってしまったりしたことが環境問題の根幹にあります」と福岡先生は現代社会が抱える問題を指摘した。

 今年10月、愛知県名古屋市で生物多様性条約第10回締結国会議(COP 10)が開催される。生物多様性に関する活動も活発に行わ れ始めているが、福岡先生によると、単に絶滅危惧種を救うことが生物多様性ではないという。「地球上に生息するすべての生 物は絶え間なくパスを受けて、パスを通しており、それが動的平衡の流れを支えています。その網の目が多ければ多いほどよいので、生物多様性 が大事になってくる。つまり動的平衡を支えるために生物多様性があるのです」と動的平衡の視点で生物多様性について解説した。

 ミーティングの後半では、今年5月に開催される第5回ロハスデザイン大賞2010にエントリーした企業が商品やプロジェクトに ついて発表。また、世界で5指に入る長寿の村として知られる中国の巴馬に関連したプロジェクトの報告が行われた。

右上/ユーモアたっぷりのトークで魅了 した福岡先生。右下/巴馬プロジェクトについて報告するソトコト・植月。左上/ 評議会メンバーがロハスデザイン大賞2010へのノミネートプランを発表。左下/ 会場は東京ミッドタウン内の「d-labo」。


今月のDATA
花粉症の人が多い県

家庭からのCO2排出量は76%削減できる!
国民病のひとつ花粉症。ウェザーニューズが今年2月に行った調査によると、花粉症の人が最も多い県は静岡県で、実に38.16%。 ちなみに2位は群馬の38.04%、3位は山梨県で37.32%、以下、栃木、三重と続き、最下位は鹿児島県で21.33%だったとか。とは いえ福岡先生によると、花粉症の症状緩和のために処方される抗ヒスタミン薬が効く仕組みは機械論的にみると簡単だが、動的平 衡の観点からはそう簡単な話ではないという。抗ヒスタミン剤は、細胞の受容体に先回りして入り込むことで鼻水や涙などを出す「サイ ン」を一時的にストップする薬だが、動的平衡が働くと受容体が増え、逆に過激なアレルギー症状が出てしまうという。効率思考への 警鐘だと、福岡先生はとらえている。

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